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パナマの海にて
樹はその後、一言も口をきかないままソファで休み、翌朝一人で帰国していった。
残された私はチームのみんなとパナマの海へ繰り出した。
「ダーリンがいなくて寂しい?」
テンションの低い私を見て、清美さんが話しかけてくる。
30歳の清美さんはダイビングスクールのコーチをしながら自身も国際大会に出ているベテランダイバーだ。
「そんなに仕事休めないらしくて、もともと今日帰国する予定だったんですよ」
私は笑顔を無理やり作ってそう答えた。
「一般企業の勤め人をパナマの大会に連れてくる計画自体に無理があったと思うぞ?」
そう返してきたのは武司さん。
ダイビングスクール経営者で、大会の運営スタッフも務めている。
清美さんの旦那さんだ。
(長い付き合いだからって、甘えすぎてたのかな?)
昨夜の喧嘩を思い出し、また落ち込みそうになる気持ちを私は奮い立たせた。
(帰国してから謝ろう。今はこのパナマの海を堪能しなくちゃ。
なかなかここまでは来られないんだから!)
私は顔を上げるとエメラルドグリーンの海へ飛び込んだ。
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