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ルカ
いつもいつも、俺の推しは報われない。
俺はずっと恋愛小説や恋愛漫画が好きだった。
乙女ゲームやBLゲーム百合ゲームも好きだったが、俺は子供の頃から本を読むことが好きだった為その影響で小説や漫画の方を見ることが多かった。
「また、報われねえのかよ…」
俺はそう呟いて途中まで読んでいた小説を閉じる。
今読んでいるのは【花咲く景色で君とまた。】という学園モノの少女向け恋愛小説である。
また推しが告白して振られてしまう場面を見てしまった。辛い、辛すぎる。
俺の推しはこの花咲ルカ。
主人公の義理の弟である。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経までいい。
完璧な弟である。
元々は何も出来なかったが、義姉(主人公)に恋をしてから義姉を守りたいという思いの為必死に努力をしこのような完璧な男になったのだ。
これだけでも素晴らしいというのにこの男はさらに幼い頃から舞台である高等部に入るまでずっと姉のことを思い続けていたのだ。
健気すぎるだろ…。
ちょっと腹黒だしドSだし、主人公のこと以外どうでもいいって思う節あるけど本当にいい子なんだ。
しかし、しかし、報われなかった。
” 弟としか見れないし私には好きな人がいるから、ごめんね。ルカにはもっといい人がいるよ。これからも姉として接して欲しいな。”
” そ、そんな……わかってたけどさ。姉様は俺のことなんて見てないって。
…でも、ごめんね姉様。俺、こんなに姉様のこと好きなのに…もうただの弟になんて戻れないよ……。”
主人公とルカの言葉が酷く胸に残っている。
そりゃそうだよな。ルカは元々この告白を機に姉元から離れる気でいたんだ。
花また(略称)の続編で主人公の結婚式のシーンがある。その時を機に彼はいなくなってしまったんだ。どこに行ったかなんて記されていなかった。作者はルカのことなんてどうでもいいんだ。
ただルカの部屋に置き手紙が残されていたらしい。
” 姉様、ごめんね。俺は姉様の望む弟にはなれなかったよ。”
ただそれだけを記して、昔義姉からもらったルカが何より大切にしていたネックレスを近くに置いてルカはいなくなっていた。
義姉を忘れようと必死に距離を置いたのだろう。辛い、辛すぎる。
ちょっと腹黒だしドSだけど努力家でいいやつなんだ。なんでこんな目に合うんだ。
というか無事に平和に生きてて欲しいから作者続編出せよ。
花またの作者は半年前に失踪したらしい。
ったく…作者はどこで油売ってるんだか。
ルカが報われるストーリーが欲しい。
俺がヒロインならルカにこんなに辛い思いは絶対にさせないのに。
俺がそんなことを考えていると天井に煙が流れ込んできた。
「あれ、なんだ…?」
煙は玄関の方からだ。
俺はどうなっているのか見ようと玄関の方に向かった。
「なっ…!?!?」
玄関が燃えていた。
どうやら外から火がきたらしい。
え、どうしよう。ここ4階だし飛び降りることは出来ないよな。玄関塞がれたら詰みなんだが。
俺はここにいてはいけないと思い何とか逃げようとした、しかし急に息が苦しくなり意識がフラフラして倒れ込んでしまった。
ああ、そういえば火事場の煙は絶対に吸っちゃいけないんだったな……
俺はそんなことを思いながら暑さと息苦しさから逃げることも出来ず、静かに目を閉じた。
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