開幕

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開幕

あれから10年経った。 俺はその後孤児院に連れていかれ、いじめられることなどもあったが、母の暴力に比べれば大したことないと耐え続け、それに加えて沢山勉強をして見事花またの舞台である「私立桜ミライ高等学園」という高校に入学することが出来た。この学校は小学校からのエスカレーター式な為、特待生である俺や主人公、そしてルカはかなり目立つ。 この10年の間、俺は一度もルカに会うことがなかった。だからルカとまた出会えることがとても楽しみで仕方がない。 まあ会えると言ってもルカが特待生として入学をするのは来年だから一年待つことになるけれど。 まあ何であれ俺の目的はただ一つ、ルカを幸せに導くこと!ただそれだけだ。 今日は入学式。新しい制服に初めて袖を通した。そわそわして仕方がない。 なんといっても花またの聖地である高校に通うことができるのだ。 実物はどんな風なんだろう、とか物語に載っていない部分も見ることが出来るのかなどとにかく胸が高鳴って仕方がない。 俺は登校中特にパンを食べて走っている少女にぶつかることもなく、平穏に高校の門の前まで来た。 周りにはお嬢様、お坊ちゃまばかりで明らかに浮いているのがわかる。 俺がクラス表を見ようと昇降口の前まで行くと、明らかに周りの人にコソコソと俺の噂ををしているのがわかった。 この学校は金持ちだらけだから平民の俺がいるのを見慣れていないのだろう。プラス孤児院育ちだなんてバレたらまたいじめられるかな〜…。 俺がそんなことを考えているとふとふわっと、花の香りがした。 正確には花のシャンプーの香り、だが。 俺の横を一人の女子生徒が通り過ぎたのだ。 俺はその女子生徒に見覚えがあった。 「は、花咲みのり…」 そう、その少女は他でもない花またの主人公花咲みのりだったのだ。 少女は花の香りをふわっと香らせながら振り返り、不思議そうに首を傾げた。 うわ、すっげー美少女じゃん……これはルカも惚れるわ。
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