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「美味しい…!今まで飲んだお茶の中で1番美味しい!世界一!」
俺は思ったままを口に出してしまった。
するとルカは少し恥ずかしそうに顔を背けて「…大袈裟」と告げた。
え、推しの照れ顔かわいい。
新たな一面ゲット…というか小説の文面で見るのと現実で見るのとじゃ破壊力の差が半端ないな。
あ〜〜幸せ、推しを立体で見れてしかもお茶まで出してもらえてる。もう俺今このお茶に毒が入っていて例え二度目の死を迎えても何も文句はない。むしろ幸せだ。
「……幸せ」
俺が零した言葉にルカはぎょっとした顔で俺の顔を見た。
「これくらいで幸せ感じるとか、ヨウくんどんだけやばい食生活してるわけ…」
ルカはそう呟いた後、テーブル越しに俺の頬に触れてきた。
え、何、もうサービスとか大丈夫だよ?
俺ルカがいるだけで幸せだしお腹いっぱいの気分だから!!
「……全部母親?」
ルカはそう俺に尋ねた。
俺が何でこんなに傷だらけなのか、こんなに傷付けたのは誰なのかってことだよな。
他でもないルカが俺のことを心配してくれたことが嬉しくて傷だらけなことなんてどうでも良く感じてしまう。
母親、…だったっけ、あの女。
ああそうそう、母親だったわ。
ヨウなんて名前なのに陰気な男ね!みたいなこと言ってきた酷い女だわ。
俺前世の名前も陽斗(ハルト)でヨウって漢字が付いてるから地味に傷付くんだよな。
「そう、だけど」
俺がそう告げるとルカははぁ……とかなりでかい溜息をついた。相変わらず俺の頬には触れたままだ。ルカに触れられた頬が妙に熱い気がしてなんか変だ。
俺の目の前に本物のルカがいて、そのルカが美味しいお茶を入れてくれて(普通の緑茶みたいなやつだけどルカが入れてくれたから特別)、他でもない俺の頬に触れていて…え、夢?俺少し前まで煙吸い込んでしにそうになってたはずだけど。ここが天国ですか?
「………たの、」
ルカが何かを言っていた。
俺は自分の世界に集中をしすぎていてルカの言葉を上手く聞き取れていなかった。
俺は慌ててルカの方を見て口を開いた。
「え、どうしたの?」
「…なんでもっと早く逃げなかったのって言ったの、せっかく綺麗な顔なのにボロボロじゃん」
ルカの綺麗な空色の瞳が俺の姿を映す。
相変わらず頬には触れたままだ。
この綺麗な瞳で見つめられると、なんだか…なんだか、捕らわれたような感情になる。
俺は上手く目を合わせられなくなり、ルカから目を逸らした。
相変わらずルカの視線は感じたままだ。
「……あ〜えっと、お母さんからは出るなって言われてて…」
俺は必死に記憶を辿りながらそう答えた。
「…それ今ここにいて大丈夫なの?」
ルカがそう尋ねた。
確かにやばい、もしバレていたらまた酷く蹴られたりするだろう。
でもルカと今こうして会えたことが幸せすぎて今はそんなことどうだっていい。
「大丈夫、ルカくんは気にしないで」
俺はそう伝えて微笑んでみせた。
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