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シナリオ通りのつまんない世界とはどういうことだろう。俺がそう思っているとルカは立ち上がって移動してきた。
そして俺の隣に並んで俺の耳に耳打ちをしてきた。
何だろう、と思っているとまた衝撃的なことを告げられる。
「…俺、未来がわかるんだよね。
この後俺の両親は不慮な事故で亡くなる。そしてその後、俺は親戚の家に引き取られる。やがて俺はそこにいる花咲みのり(花またの主人公の名前)という義理の姉になる女に恋をする。しかし、その女は他の男に恋をしてその男と結婚をする。辛くてしにそうになった俺は、置き手紙を残し失踪。道中で交通事故に見舞われこの世を後にする。…ほんと、ろくなことない人生だよね。」
ルカはそうペラペラと話した後、再びテーブル越しの俺の向かいへと戻った。
「ま、まさか転生者…?」
俺はルカにそう尋ねる。するとルカは不思議そうな顔をして俺の顔を見た。
「転生者ってなに、俺は昔見た夢でそう告げられただけ。所詮夢だろって思いたいけどあまりにもリアルだったから信じてる。」
「な、なるほど…」
ルカは別に俺と同じ転生者ではないようだ。
ちょっと話せるかもしれないと思ったのにな。まあ何であろうとルカはルカであってそれは変わらない。俺の守りたい大切な推しだ。
「ヨウくんは、俺を救ってくれるって言ったから。…俺も君を救い出す、それでフェアでしょ。」
ルカはそう言って少しだけ笑った。
そしてお茶を一口のみ、俺の反応を伺っていた。
…俺は少し前までルカがこんな風に笑うなんて知らなかった。ルカとこんな風に面と向かって話してお茶を飲むことになるなんて知らなかった。ルカを救うことになるなんて思ってもいなかった。まさか、考えていたことが現実になるなんて今でも信じられない。
でも…それでも俺は今目の前にいるルカを救おうと決めたんだ。そしてルカもそれを望んでいる。もう俺の一方通行な感情なんかじゃない。…そうだ、一方通行ではないんだ。
本当に、本当に…ルカを救うことができるんだ。あの辛くて、苦しい結末を変えることができるんだ。
「…何で、泣いてるの」
ルカの言葉で自分が涙を流していたことに気付いた。
あれ、なんでだろうな…俺、ルカを救えることが嬉しくて、ルカを幸せにすることができるかもしれないことが嬉しくて、…ただただ嬉しくて仕方がないんだ。
「べ、別に大丈夫」
俺は涙を拭いて改めて目の前にいるルカを見つめた。そしてルカの片手を両手で握りしめてから口を開く。
「ルカ、絶対に救って絶対に幸せにするから。ルカが夢で見た未来を塗り替えてみせるよ。…俺は、」
” ルカが幸せになる物語にしたいんだ。”
言葉が詰まった。ルカは不思議そうに俺を見つめている。
「…俺は?」
「…お、俺はとにかくお前を幸せにしたい!そのためなら何でもするから…!」
俺が焦って発した言葉を聞いてルカは楽しそうに顔を歪めた。そして握られていない方の空いていた手で俺の頬に触れてきた。
「なんでも、ねぇ…ふふ、楽しみにしてる。今俺に言ってくれた言葉、絶対忘れないでね」
「…?お、おう…!」
こうして俺はルカを救うこと、ルカは俺を救うことを約束した。
今世ではルカを救うことができるんだ。
どうにかして俺はルカを幸せにする。
そして、ルカが心から幸せだって笑えるようにしたい。
俺がそんなことを意気込んでいる時、何か運命が変わっていくような気配がした。
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