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あれから暫くしてルカの家を出て、自宅に帰った。
母親はまだ帰ってきていない。
よかった。バレたら何されることか。
中身は男子高校生だが、容姿は子供だからな…暴力なんて振られたら反撃することはできない。
俺は母親が化粧のために使ったのであろう鏡を使って自分の現在の見た目を見た。
ルカの言う通り確かに酷く傷だらけだ。
ヨウ、とやらは毎日あんな風に蹴られたりしていたのだろうか。
そもそも本物のヨウの中身はどこにいってしまったのだろうか。
色々と疑問が浮かぶ。
俺の心のどこにも元いたヨウの痕跡はない。
まさか入れ替わった、とかか…?
それなら納得できるけど、入れ替わりならいつか戻ってしまうのだろうか。
ルカの顔が頭に浮かぶ。
せめて、戻るならあいつを救ってあいつが幸せになってからがいいな。
それさえ終われば俺はいつでも安心して消えられる。俺はルカさえ幸せならそれでいいんだ。
「あ、そういえば苗字」
俺は自分の苗字を知らなかったことを思い出し、何か苗字の資料になるかもしれないものを探し始めた。
うーん、保険証とかあればいいんだけどな…。
ぐちゃぐちゃに物が置かれている机を漁っているとそれらしきものを発見した。
「え〜っと、春宮(ハルミヤ)ヨウ……」
俺の名前は春宮ヨウというらしい。
俺の元の苗字は桜坂なんだけど、やたらと春っぽい苗字ばかりだよな…。
春になったら咲く花は桜……
俺はふとルカの苗字を思い出していた。
何か関係があるのだろうか。
…まあ、俺みたいなやつとルカじゃ何も関係ないよな。
俺は考えようとしたが面倒くさくなったので諦めた。
それよりルカが入れてくれたお茶もお菓子も美味しかったな、前世で食べたどんな高級料理よりも美味しかった。
「…次いつ会えるかな」
さっき会ったばかりなのにルカのことばかりを考えてしまう。
それくらいルカと過ごした時間が幸せだったんだ。
くそ、次の約束をしておくべきだった。
俺はそんなことを考えながら何もない天井をぼーっと眺めていた。
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