topo

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 月曜日の朝。  太陽だってまだ昇ってないのに、こんなに寒い中、出かけなきゃいけない。冷えたコンクリートロードをひたすら下る。  僕の顔半分は、天然パーマの長い前髪で覆われている。ちょっとやそっとの風では捲ることはできない。  動画配信アカウントのtopoとは、スペイン語でモグラのこと。1日の大半は地下の音楽スタジオにいる僕。自分への皮肉ではなく、ユーモアのつもり。  このモグラは週に一度、満員電車に乗って市内に行き、高校に通わないといけない。通信制の生徒(ぼく)にとって今日は超ブルーマンデーだった。  リュックを前に抱き締め、息も絶え絶えに電車を降りると、高校までは徒歩5分。定時制の生徒と思われる同年代の人たちが、友達と笑い合いながら登校するのをすり抜けながら、誰にも呼び止められないように黙々と歩いた。  高校の敷地内に入ると、どこかの教室からギターの半音階(クロマチックスケール)の音がした。練習にアンプ繋ぐなんて、神経太いなあ。 「メトロノーム、使った方がいいな」  小さな呟きが聞こえるわけもなく、いびつな音楽が続いていた。
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