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翌日、目覚ましが鳴るより前に飛び起きた。いつもの灰色のパーカーを着て、階段を降りる。無人の台所に準備されたサンドイッチを口に詰め込み、家から飛び出した。
息は白いのに、寒さは感じなかった。自然と早歩きになっていて、いつもより1本早い電車に乗れた。隣の人との空間が、いつもより広かった。
駅を降りて、学校へと急ぐ。何の根拠もないのに、五十嵐くんがまたあの教室でギターを弾いているんだと思った。
行ってどうしようっていうんだ。
もう何年も自分から声をかけたことなんてない。
お店で何か注文するのだって、声が震えてできないくせに。だからいつもネット通販か、先に注文内容を予約送信する。
心が不安で霧掛かった。俯いて角を曲がった、その時。
「よお」
校門に寄り掛かっていた五十嵐くんの髪は、青色になっていた。
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