topo

7/7
前へ
/8ページ
次へ
 翌日、目覚ましが鳴るより前に飛び起きた。いつもの灰色のパーカーを着て、階段を降りる。無人の台所に準備されたサンドイッチを口に詰め込み、家から飛び出した。  息は白いのに、寒さは感じなかった。自然と早歩きになっていて、いつもより1本早い電車に乗れた。隣の人との空間が、いつもより広かった。  駅を降りて、学校へと急ぐ。何の根拠もないのに、五十嵐くんがまたあの教室でギターを弾いているんだと思った。  行ってどうしようっていうんだ。  もう何年も自分から声をかけたことなんてない。  お店で何か注文するのだって、声が震えてできないくせに。だからいつもネット通販か、先に注文内容を予約送信する。  心が不安で霧掛かった。俯いて角を曲がった、その時。 「よお」  校門に寄り掛かっていた五十嵐くんの髪は、青色になっていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加