369日の終わり

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耳を澄ませるが、特になんの変化もない。 意識のない、もとい眠っている男は非常に重いままだ。 その体をなんとか引きずって、ウッドデッキに出る。 デッキ上から庭に放り投げたいが、物理的に無理がある。ここもやはり、引きずるしかないだろう。 男を一旦その場に寝かせ、雪で芝生が見えなくなった庭に足をおろす。 靴下のままで埋まった箇所が刺すように痛いが、靴を履く気は毛頭ない。 男を殺すことになんの痛みも感じない心の代わりに、体くらい多少の痛みを負うべきだ。 それも、霜焼け程度だろうけれど。 庭から、ウッドデッキの男の体を引きずり落とす。 酩酊状態の男が、暖房とアルコールで熱(ほて)った顔を冷やすためウッドデッキに出た。 千鳥足で進んだところ目が回り、足を踏み外し庭に転落。 そのまま昏倒、もしくは寝入ってしまい、吹雪の中雪に埋まって凍死。という計画だ。 仰向けではなくうつ伏せのほうが自然だろう。 男の背中に腕を突っ込み、ひっくり返す。 ひんやりとして気持ち良いでしょう?-- 手や顔の位置を自然な感じに微調整し、デッキ上から確認して、事故現場の偽装は完成した。 足跡や引きずった痕跡は残っているが、たいした時間もかからず、雪が消し去ってくれるだろう。 知らず、空を仰いで息を吐き出していた。 雪は、明日の朝には、デッキのすぐ下辺りまで降り積もり、雪解けはしばらく先になりそうだ。
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