369日の終わり

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それに伴って、男の発見も遅れそうで胸を撫で下ろす。 遅れれば遅れるほどいい。 あまりの寒さが逆に功を奏し、仮死状態で生きていた、なんて奇跡は、万に一つもあっては困る。 朝になったら、警察に「目が覚めたら男がいない、昨夜の晩酌のあとがそのままで、暖房はつきっぱなし、リビングの窓が開いている」と通報する手筈だ。 警察は、まずは空き巣や強盗を疑うだろうが、物が盗られた形跡も、荒らされた、争ったようなあともないと説明すれば、きっと自分で出ていったのだと想像するだろう。 この吹雪の中を? 疑問は湧くが、酔っ払いとはえてして私たちには思いもよらない行動をとるものだ。 書き置きはあるか、荷物や靴は、実家や会社に連絡したか、心当たりは、そんな質問に答えたあとは、おそらく「心当たりをあたってみてから、しばらく様子をみてください」といった展開か。 警察は、家の状況を確かめにくるだろうか。 どちらでも構わない。その為に寒さを我慢して窓を開け放したままでいるのだ。 通報するときに開ければいいとも思ったが、どんなことでばれるかわからない以上、やはり最大限環境を作り上げておく必要がある。 それから私は、納得できないという態度を取りつつ電話を切って、あとはのんびり男を捜すフリをすればいい。 心当たりに連絡をして、3日程様子を見てから捜索願いをだせばいい。
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