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保健室に駆け込んできたお前を見たとき、俺は直感した。思わず名前を訊いたのは、確かめたかっただけなんだ。
――姿は違うけど、お前が〝彼女〟なんだろ?
「――リオ」
「何?」
「お前は俺の恋人なんだよな?」
リオは眉根を寄せた。
「やっぱりまだ忘れてるの?」
「いや……」
今世の馴れ初めだって憶えてる。
中三の……あの世界にはなかった聖バレンタインの日に、お前はちょっと怒ったような顔をして「ただの幼なじみは、もうやめたいんだけど」ってチョコレートをくれたんだ。すごく嬉しかった。
前世で初めて想いを告げてくれたときも、照れ隠しなのか、お前は少しふくれっ面になってたよな。
俺が死にかけて、隣国の姫騎士だったお前が治癒魔法をかけて助けてくれた直後だった……って、〝姫〟で〝騎士〟って何なんだ? しかもお飾りでもなく、魔王討伐の最前線に出るなんて――と今世の俺は思ってしまうが、とにかく、お前との旅は楽しかったよな。
それにしても、『シュワンヌ・テイルズ』が登場人物の衣装を〝本格中世風〟と謳ってたらしいのは幸いだった。そうじゃなかったら、お前は太腿や胸元を派手に露出して戦うはめになってただろうからな。
ゲームでは俺が国王になってお前と結婚したところで「その後も賢王の治世は末永く続いたのであった……」みたいな感じで終わってるそうだけど(続編は、俺たちの子孫の物語らしい)、結婚してからも色んなことがあったよな。むしろ、お前との絆は、あれからどんどん強いものになっていった。
「――なあ」
「ん?」
「俺たちって、どこまでしてたんだっけ?」
「は……!?」
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