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前編
「シュンちゃん、大丈夫?」
薄目を開けると、夏の制服姿のリオが心配そうに覗き込んでいた。
「少しは気分良くなった?」
自分の部屋の寝台に横たわっていたことを俺は思い出す。
――俺の、部屋。
魔法並みに便利なものに満ち溢れているのに、城内にある鶏小屋よりも狭い、不思議な空間。
「顔色は悪くないのにね」
半身を起こした俺は、差し出されたガラス製のゴブレット……グラス……カップ……母親はコップって言ってるな、に入った水をごくごくと飲み干した。
「まだまだおばさん帰って来そうにないから、勝手にキッチン触っちゃってごめんね」
そう言いながら、リオは床にぺたんと腰を下ろした。
格子柄のスカートから、つるりとした太腿がはしたなく露出している。こちらの世界では普通の丈のようだが、淑女としてはいかがなものか。
――それとも、リオは〝彼女〟じゃないのか?
「暑いね。エアコンの温度下げていい?」
勉強用の机の上にある〝リモコン〟を取ろうと立ち上がったリオの後ろ姿を、俺はまじまじと眺めた。
馬の尻尾みたいに括ったサラサラの髪の下のうなじや、制服の水色のシャツに包まれた肩が、儚いくらいに華奢だ。
――同じ十七歳の時点でも、〝彼女〟はもっと大人びた体型だったような気がする。
「……ねえ」
リモコンを置いたリオは、少し気まずそうに振り返った。
「なんで、そんなにじろじろ見てるの?」
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