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なんで、なんでなんでなんで!
……でも、笑わなきゃ。
「あ、すみません。空気読めなくて……。
お兄ちゃんこれ置いてくね」
私はそう逃げるように、持ってきた紙袋を置き去りにして走る。
……あーあ、好きだったのにな。
まさか彼氏のことを“お兄ちゃん”って呼んで庇うなんて──。ほんと、救えない。
バカだな、私。こんなことして自分の首を絞めて。
あいつもバカだな。あんな女とこれから過ごすなんて……。
ギリッ。
心に積もった怒りが歯ぎしりを鳴らす。
そして、浮気に気づけなかった私に呆れた。
あー、私可哀想。
こんな雪が降り積もる日に1人なんて。誰も手を握ってくれないなんて。
零れそうな涙を誤魔化すように私は空を見上げた。
……雪って綺麗だな。世界が白く染まっていく。
そうだ、心が凍てついたのはこの空模様のせいにしよう。早く帰って酔って暖まろう。
……忘れよう、全部。この雪のように記憶を真っ白く。
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