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初恋の人
山崎君と出会ったのは、高校の入学式初日。
学年代表でスピーチをしていた彼に一瞬で心を持っていかれた。つまり一目惚れ。
少女漫画でよくある展開。でも、本当にこんなきっかけで好きになるなんて当時は思いもしていなかった。
そんな彼はイケメンで頭も良く、スタイルも良く、おまけにとても優しいという完璧人間だったために入学初日から既に注目の的だった。
女子は山崎君以外の男子に目もくれず、とにかく必死に彼を追いかけていた。
それはまるで芸能人を見るような盛り上がり。
もちろん、私も彼を見て騒いでいた女子の一人。
でも、山崎君を好きな女子は何十人といるし、私よりも可愛くて綺麗な子もたくさんいるし、こんな平凡以下の地味女子なんて見てもくれないだろうと思っていた。
一年生の頃は遠くから彼を目で追いかける日々だったが、二年生になった時…
なんと、私と山崎君は同じクラスになり
そしてまさかの、隣の席。
私のクラスの担任は、一学期ごとに区切りをつけて席替えをするらしい。
だから、夏休みに入るまでずっとこの席ということになる。
それは私にとって、神様から与えられた最大のチャンスだと強く思った。
ずっと片想いしてきた彼が、今隣にいる。
授業中もチラチラ彼の事を見ていると、その視線に気づいたのか、休み時間に私に話しかけてきた。
「…俺の顔になんかついてる?」
低く透き通った声でそう言った。
私はその言葉に、首をしっかりに横に振った。
「…違います、ただ、かっこよくて、」
私は油断してついそんな事を言ってしまった。
はっきりと、かっこいいなんて。
その場で顔が赤くなるのを必死に堪えようとするのがまた恥ずかしくなり、私は何も言わず咄嗟に席を立ってその場を離れようとした。
「待ってよ」
山崎君は座ったまま、その長い腕で私の手首を掴んで引き留めた。
「俺と仲良くしてほしいんだけど、いい?」
彼は、私が大好きな笑顔を向けてそう言った。
ズルいよ、そんなこと言われたら
山崎君から抜け出せなくなっちゃう。
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