20人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
作文の発表者に選ばれたからと言って、なにか特別な準備をするわけではない。
ただ前に立って原稿を読むだけ。
たったそれだけのことだから、私と山崎君に進展があるわけもなかった。
学年集会が始まる中、発表者の私達はクラスメイトと少し離れた場所で待機していた。
大人数の前で喋りなれていない私は何回も深呼吸をするが、それでも緊張が止まらない。
ふと隣を見ると、山崎君は口に手を当てて一発あくびをかます。
私と比べて全然緊張していない。むしろ余裕そうだ。
「藤下、緊張してるね」
山崎君は私の顔を見て、ニコッと笑顔でそう言った。
「俺らは優秀って認められた選ばれし者なんだから堂々と言えばいいんだよ」
「自分に自信を持つって、めっちゃ大事だと思うから」
山崎君のその言葉に、少し緊張がほぐれた。
でしょ?と言いながら私に向ける笑顔は、また好きの気持ちを加速させる。
「続いて、藤下藍那さんの発表です」
「はい」
声が震えないように精一杯の声で返事をし、恐る恐る席を立った。
すると、そんな私の背中を誰かがポンっと叩いた。
後ろを振り向くと、山崎君が"頑張れ"と呟いていた。
私の大好きな笑顔を見せる山崎君。
ずるい。山崎君はどこまで私をハマらせるつもりなんだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!