理想の結婚

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「おはよう」 いつも通りの朝。 まだ眠気が残る低い声でそう言ったのは、私の旦那である白方龍平。 台所で朝食の準備をしていた私は、その声に笑顔で振り返り、同じ言葉を返した。 「今日は起きるの早いね」 私はそう言いながら、卵焼きが乗ったお皿を二つ分持ってテーブルに置く。 「今日は朝の役員会議だから」 素っ気なくそう返事をして、コーヒーが入ったコップを口に運ぶ。 「そっか」 だから私も素っ気なくそう返す。 そして私達は、互いに向かい合って静かに朝食を食べ進める。 「卵焼き美味しい?」 「まあ」 旦那は側にあった新聞に目を通しながらそう言った。 もはや私の顔を見て話すこともない。 まあってなんだよ。 結婚したての頃は、私の作った卵焼きを美味しいと言って毎回笑顔で食べてくれたのに。 今じゃすっかり慣れてそんなことも言わない。 慣れというのは怖い。つくづくそう思う。 まあ、もう結婚して4年も経つんだし。 新婚みたいな初々しいやり取りは徐々になくなっていくのも普通だよね。 夫婦なんてそんなもん。だから別に珍しいことではないし、言ってしまえばいつものことだ。 でも"仲が良い夫婦か"と言われれば、それは即答できないが。
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