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私達はそのまま外へ出た。
外は静かで、暗くて、私達の声がよく響く。
「どうしたの?一緒に飲もうって誘われてたんだから早く戻った方がいいんじゃないかな…」
私は彼の背中越しにそう言った。
「ほら、またそう言った」
山崎君は振り返って私の顔を見つめる。
「高校時代もそうだったよね。俺が誰かに呼ばれたら、話してる途中でも他人を優先して行かせるところ」
いつもは笑顔なのに、今は真剣な眼差しで私を見る。
「9年前も、今も、全然変わってない」
「俺と話すの、嫌…?」
山崎君は低い声で、寂しそうに、そう言った。
「それは違う!ただ、私が山崎君を独占しちゃいけないって、そう思ってただけで…」
私は山崎君の問いかけを必死に否定する。
「独占?なんで?」
「山崎君は人気者だから誘われることも多かったし、彼女でもない私とずっと一緒にいるのは違うでしょ?」
私は俯けた顔を恐る恐る上げて山崎君を見た。
微妙に震える右手を片方の手で必死に押さえる。
「なんだよそれ。俺が誰と一緒にいたいか、誰と話したいかは藤下が決めることじゃないだろ」
山崎君はそう言いながら微笑した。
そして私に近づいて耳元でこう呟いた。
「決めるのは俺だから。
俺の気持ち、全然知らなかったでしょ」
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