理想の結婚

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「旦那さんも元気にしてる?」 同じテーブルに座り、加奈はフラペチーノを一口飲んでそう言った。 「うん、相変わらずね」 私はそう言うと同時に思わずため息をついた。 「…何かあったの?」 そのため息に気づいた加奈が私を心配そうに見つめる。 「結婚して年数が経ってくると会話も減っちゃうのって普通なのかな?」 「うーん…でも、何年経っても仲良い夫婦は仲良いからなぁ」 加奈は前で腕を組みながら考え込んだ様子でそう言った。 「何言っても素っ気ない返事しかされないんだよ?うん。とか、まあ。とか…一言で終わっちゃうし」 旦那は元々無口な性格ではない。 「マンネリ化しちゃったのかもね〜。でも、会話が減ったから嫌いになったっていうわけじゃないと思うよ」 「ほら、必要以上に距離を取らないほど仲が良いって言うし。夫婦の形なんて十人十色だよ!二人が幸せだって思えるんならいいじゃん!」 加奈はそう言いつつ、美味しい!と呟きながらフラペチーノをどんどん飲み進める。 「あんな完璧な旦那さんがいたら幸せだろうな〜。藍那が羨ましいよ」 加奈は頬杖をついて、顎に手のひらを当てた。 確かに幸せだ。不自由なく生活できているし、不満などはない。 けれども、今の状態は私が望んでいる夫婦の在り方じゃないような気がしている。 「あ!ごめんもう時間だから仕事戻るね!」 加奈は腕にはめていた腕時計を見て、急いでフラペチーノを飲み干すと、ささっと荷物をまとめて席を立った。 「それじゃあね!ばいばい藍那!」 そして急ぎ足でお店を出て行く。 あーあ行っちゃった。 加奈は忙しそうだな。 一人残された私は、残りのフラペチーノを黙々と飲み進める。 夫婦の形はそれぞれか こういう夫婦の在り方もあるってことだよね。 そう考えると、モヤモヤしていた心も少しスッキリするような気がした。 ズズズズズズ…… フラペチーノの底に残った塊を惜しみなく吸い上げる音が大きく響く。 「よし、帰るか」 ようやく全て飲み干し、私はバッグを持って席を立った。 お店を出ると、やんわりと冷たい風が私の肌を撫でる。 その風は雨が降る前兆を知らせていた。 先程まで晴れていた空も、今は暗い雲に覆われている。 雨降りそうだな、早く帰って洗濯物入れないと。 怪しげな空の下、私は足早に自宅へ向かった。
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