理想の結婚

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「来週の土曜日に同窓会があるから、行ってくるね」 お風呂から上がってきた旦那に早速そう伝えると、返ってきた言葉はうん。の一言だけ。 これまた素っ気ない返事。楽しそうなのは私だけみたいじゃん。 私のことなんて興味なさそうだし。 会話が減ったから嫌いになったわけじゃない。夫婦の形は十人十色だと、加奈もそう言っていた。 「あ、ごめん会社から電話だ。ちょっと出てくる」 龍平さんは側に置いていた携帯を持ち、別の部屋に足早で移動する。 きっと私達はこういう夫婦の在り方だ!って割り切ってしまえばいいんだろうけど、私はどうもそう思うことができない。 それはきっと、自分の中で何年経っても仲睦まじくいたいという譲れない思いがあるからだろう。 本当の幸せってなんだ? 理想の旦那さんと結婚できて、幸せを掴んだはずだったのに。 もう、最初の頃のような仲の良さは取り戻せないのだろうか。 私は不安になった。 理想を手に入れたのに、怖くなるのはどうしてだろう。 「あーもう」 何故か頭がギクシャクして、白米を思いっきり口にかき込む。 すると扉が開き、旦那が戻ってきた。 椅子に座り、またご飯を食べ進める。 「………」 どちらからも会話を切り出さない。 こんな私達は、きっと側から見たらつまらないと思われるだろう。 "あんな完璧な旦那さんと一緒になれるなんて幸せだね"って言うけれど。 表で見ているだけじゃ分からないよ 幸せの形なんて。
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