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プロローグ: Hässlich
ニルヴ・シュテルノ。彼の見た未来は、彼自身の力で変えることはできない。そして、未来を変えるために必要な二人、アイリアとエンゼルは、今は動員できない。
つまり、ニルヴが見た未来は、変えることができないのである──故郷の崩壊は、止められない。同時多発的に、爆発が起こる。その景色が見えてしまった以上。魔女との交戦が、映ってしまったからには、その戦いも避けられない。
「できるだけ、被害は最小限に抑えたいという思いもありますし、できるだけさっさと仕留めたいところです。校長先生にも、早い段階から参加していただけるよう、準備をお願いしたいのです」
「なるほど。確かにその件に関しては承りました。ただ、その上で何点か、認知してもらわなきゃいけないことがありましてー……」
報告を受けたアプフェルドルン校長はそう言うと、急にホワイトボードを取り出して、絵を描いて説明を始めた。妙にコミカルで上手い絵を描くものなので、思わずニルヴは苦笑い。
「なんか、シュール、って言うんですかね……」
「絵柄はどうでもいいでしょう。それよりも大事なのは、魔女っていうのがどういうとこにいるのかってことです。あなたが思ってるより魔女ってのは段違いなので、私のことが最強に見えるかもしれませんが、実際のところ私は……そこまでな方です。何しろ魔法の縛りがものすごくきついので」
いきなりニルヴが耳を疑うようなことを言う。何度か校長の魔法使いとしての力を観察しているニルヴだが、その力は絶大だ。彼女の能力は、普通なら手に持つくらいの数を作るのが限界である魔法武器を無尽蔵に作れる。しかも自由に全てを操れる。
あれで「縛りがきつい」とはまた、ご冗談を。そんな風に思っていた。
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