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「ほんと困った人ですよ。よくあんなん弟子に迎えようなんて言い出しましたよね。あの時、僕めちゃくちゃ驚いてましたからね、アリスを前にそんな態度は取れそうになかったですけど」
ゼーレの話になると、今度はニルヴの方が饒舌になる。未だに引きずっているのだ。ニルヴも、ゼーレも。
我ながら本当に気持ち悪いと思いながらも、話さずにはいられないのだ。
「でも、頼りがいはあるでしょうに」
「ありますよ、そりゃあね、ありますよ。僕はゼーレさんには一度コテンパンにされてますからね。あの時は虚勢を張ってちょっと強気な返しをしてみたものの、内心はもう嫌だ、多分助かるけどもう嫌だ、ってなりましたよ」
「凄い食い付きますね。まあいいでしょう。私の中にある行動プラン的にも、ゼーレさん程度の存在というのはかなり重要な立ち位置です。というわけで連れて行きたいのです」
予想はできていた。故郷の街と魔女ばかり気にしていたために注目していなかったが、もしかしたら、未来の映像に映っていたかもしれない。
ともかく、今はなりふり構ってはいられない。了承するしかないようだ、とニルヴは割り切る。
「いい……ですよ、それは。勝手に連れてくるなりすればよろしいです」
「私の口調、うつりましたか?」
「んなわけないでしょう」
「なるほど。それにしても……面白い。未来視の力というのは、因果の循環を生むのですね」
因果の循環。過去ないしは現在を原因とする未来を見て、それを動機とした現在の行動。確かに奇妙だ。
「でも、そのおかげで今後の対応を考えられるのなら、この力の利便性は揺るぎませんよ」
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