プロローグ: Hässlich

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
「ほんと困った人ですよ。よくあんなん弟子に迎えようなんて言い出しましたよね。あの時、僕めちゃくちゃ驚いてましたからね、アリスを前にそんな態度は取れそうになかったですけど」  ゼーレの話になると、今度はニルヴの方が饒舌になる。未だに引きずっているのだ。ニルヴも、ゼーレも。  我ながら本当に気持ち悪いと思いながらも、話さずにはいられないのだ。 「でも、頼りがいはあるでしょうに」 「ありますよ、そりゃあね、ありますよ。僕はゼーレさんには一度コテンパンにされてますからね。あの時は去勢を張ってちょっと強気な返しをしてみたものの、内心はもう嫌だ、多分助かるけどもう嫌だ、ってなりましたよ」 「凄い食い付きますね。まあいいでしょう。私の中にある行動プラン的にも、ゼーレさん程度の存在というのはかなり重要な立ち位置です。というわけで連れて行きたいのです」  予想はできていた。故郷の街と魔女ばかり気にしていたために注目していなかったが、もしかしたら、未来の映像に映っていたかもしれない。  ともかく、今はなりふり構ってはいられない。了承するしかないようだ、とニルヴは割り切る。 「いい……ですよ、それは。勝手に連れてくるなりすればよろしいです」 「私の口調、うつりましたか?」 「んなわけないでしょう」 「なるほど。それにしても……面白い。未来視の力というのは、因果の循環を生むのですね」  因果の循環。過去ないしは現在を原因とする未来を見て、それを動機とした現在の行動。確かに奇妙だ。 「でも、そのおかげで今後の対応を考えられるのなら、この力の利便性は揺るぎませんよ」
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!