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師匠
町の入り口に着くと、何かオレンジ色のオーラで町が覆われている。これがオーマの言っていた結界なのだろうか? 僕は恐る恐る手を入れた。でも、別に何も起こらなかった。僕がモンスターじゃないからなんだろうか?
町に入ると、目の前に真っ白な長い顎髭を蓄え、髪の毛が1本も無いお爺さんが仁王立ちしていた。
「待っていたぞ少年よ」
「え? どなたですか?」
「ワシは賢者じゃ。お主がどうなりたいかによって今からの行動を補佐する役目じゃ」
よく分からないけど、異世界転移したからには無双出来る筈だ。取り敢えず、このお爺さんに頼ってみよう。
「僕、強くなりたいんですけど……」
「そうか……まあ、ワシが鍛えてやっても良いんじゃが……」
お爺さんは満更でもなさそうだ。押せば鍛えてくれるかも知れない。
「先生! お願いします!」
「お、おお。そこまで言うなら」
お爺さんは先生と呼ばれてテンションが上がっている感じだ。更に、必死で嬉しさを隠そうとしている。
「師匠! 宜しくお願いします!」
「よし! そこまで言うなら付いて来い!」
お爺さんは鼻歌交じりに足取り軽くどこかへ向かい出した。1分程付いて行くと、小さな道場のような場所に着いた。どうやら剣道場のようだ。
「良いか? 魔力と言うのは精神力なのじゃ。ワシが竹刀で叩くから耐える事が出来れば魔力は上がるじゃろう」
「えっ? 叩かれるんですか?」
「そうじゃ。ダメージは呪文で回復してやるから気にせんでも良いぞ」
いやいや、気にするよ。痛いんだから……。でもまあ1回耐えるだけなら何とかなるかな。
僕が正座で師匠を待っていると、師匠は竹刀を持って帰って来た。
「では行くぞ」
「は、はい」
僕は目をギュッとつぶって力無く答えた。
バシイッ!
「痛~!」
右肩に強い痛みが走った。思っていたよりも強く叩かれた。でもまあ、これで魔力が上がるなら……。
バシイッ!
「痛~!」
左肩に強烈な痛みが走り、僕は師匠の方を振り向き言う。
「ちょっ、1回じゃないんですか?」
すると、師匠は既に振りかぶっていて、構わず竹刀を振り下ろす。
バシイッ!
「痛い! 止めてください!」
バシイッ!
「ギャー!」
僕は必死で師匠に抱きついた。
「コラ! 離れんか!」
「勘弁してください! そんなつもりじゃなかったんです!」
「強くなりたくないんか?!」
「痛いのは無理です!」
その後、師匠は大きな溜め息をついた後、僕に回復の呪文を唱えた。
「すみません。痛いのは無理でした。僕、根性無しなんです。楽して強くなれると思っていたんです」
「仕方ないのう……。では、楽して強くなる場所を紹介しよう……」
「えっ? そんなのがあるんですか?」
あるなら早く言えよと思った。叩かれ損だ。
「ワシはあんまり薦めたく無いんじゃが仕方無いのう。付いて来い」
「はい」
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