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悠月は、『ほっとけないよ』の言葉に優しさを感じた。
「お姉さん、どうしたの? 悲しいことがあったの?」
若者は、うんとこしょ、と悠月の隣にそっと腰掛けた。
「・・・」
若者からは、ありふれた制汗剤ではない高級な檸檬の香りの香水が悠月の鼻をくすぐった。
「はい、ハンカチ、これで涙をふいて」
「私、持ってるから」
「もう、ファンデでぐしょぐしょじゃん、僕の使って」
「・・・」
「さあ」悠月はハンカチを握らされた。その若者の手は温かかった。
檸檬の残り香が悠月の心を溶かすような気持ちにさせる。
「・・・あ、ありがと、・・・ございます」
「さあ、顔上げて」
「嫌です。私、顔見られたくない、お姉さんでもない、ただのおばさんです」
「おばさん?」
「・・・そう。ダメダメなおばさんですからほっといてください」
「だから放っておけないよ、僕、『おばさん』なんて思ってないし」
「優しいのね」
「ほら、顔をあげて」
悠月は若者の顔を見た。
(え? 背が高い。芸能人? 神レベルの顔面偏差値・・・)
「なんでそんなに優しいの?」
「優しいとかそういう問題じゃないよ、泣いてる女の子は放っておけないよ」
「女の子とか言うし・・・おばさんだって私」
「僕、年上の女性、好きなんだ。自分のことおばさんなんて言わないで」
「あなたって変ね」悠月は言った。
「あ、スマイル。よく見たら美人じゃないですか、お化粧が取れても綺麗です」
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