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「何よ、そんな美辞麗句並べて、何の目的?」
「『びじれいく』ってなんですか?」
「言われて嬉しい言葉をたくさん並べることよ、知らないの?」
「俺、馬鹿なんで。あ、俺、南条拓海っていいます。お姉さんは?」
「・・・、ゆづき・・・藤原悠月。ダメダメな女です」
「ゆづきさん、おれ、拓海、よかったら友だちになってください」
「なによ、さっきから何が目的? ナンパ?」
「ナンパって昭和っぽいな。あは。目的は悠月さんの泣き顔を笑顔にしたいだけ」拓海は微笑んだ。
「はあ?」拓海の超絶殺人的なスマイルに悠月は気絶しそうになった。
「俺、悠月さんを悲しませた訳を訊きたい」
「わかった、あなた、そう言って私の部屋に来たいんでしょ」
「てへへ、それもあるかな」
そこにまた駅員が現れた。
「お客さん、駅のシャッターが閉まりますよ、ここから移動してください」
「はーい、いま出まーす」拓海はホワイトのギターケースを背負って立ち上がった。
「拓海君、よこしまな考えなら、お断りよ、男を泊めるなんて無理」
その言葉に拓海は、長い年月がそうさせたであろう鋼のような殻を感じてかえって欲情しそうになる拓海。
「ハイハイ、悠月さん、よこしまか、たてしまか、わからないけど、まずは駅を出ましょう。さ、立ち上がって」
「ちょ、ちょっと!」拓海に手を握られて悠月は激しく心臓が高鳴った。
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