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 聞き慣れない機械音、普段寝ているベッドとは違う背中に当たるマットレスの感触、鼻をかすめる独特の匂い。うっすらと目を開けると、真っ白な見覚えのない天井が見える。  ぼんやりとした意識の中で、二日酔いとは違う鈍痛が体を襲う。 「いっ、痛ったぁ……」  少し腕を動かそうとしただけで、痛みが走ると堪らずにそんな声が漏れた。 「ああ、良かった。気が付かれましたか」  突然声がして何事かとビクッと体を震わせると、まだ痛みますよねと心配そうな声がする。そちらの方に目線を向けるが、声の主に目線が辿り着く前に、それを遮る管のような物が見えてギョッとする。 「え……」 「ああ、急に動かない方がいいです。今看護師さんを呼びますので」  看護師、それにこの管。もしかしてここは病院なのだろうか。 「すみません。今意識が戻ったようです。はい、ええ。お願いします」  そこに居るのが男性なのは声で分かる。だが知り合いではないと思う。聞き覚えのない声だ。 「今ナースコールで看護師さんに声を掛けました。担当の医師と一緒にすぐにお見えになりますからね」 「はあ……ご丁寧にどうも」  なるべく痛みが出ないように視線だけ動かして声の主を見る。だが残念なことに逆光になっていて、シルエット程度しか相手の情報が見て取れない。  雰囲気と声の感じから老人ではないようだが、学生と云う感じでもない。  会話もないまましばらくすると、部屋の扉が開く音が聞こえて部屋の電気が点く。担当医だと言う男性と看護師が入ってきた。 「はい、じゃあちょっと様子確認しますね。体起こしますよー」  なされるがまま看護師に体を起こされ、ヒリヒリと体が痛む。そのまま目元にライトを当てられ、眩しさに耐えられず咄嗟に目を閉じそうになる。 「うん。はい、やはり大丈夫ですね。お名前は言えますか?」 「……栗平ですけど」  頭や両腕、脚などの触診を受けながら質問に答えると、念のために明日レントゲンを撮るが、大きな異常はないので安心するように言われて、詠琉は思わず声を出した。 「あの、ここ病院ですよね?私なんでこんなところにいるんでしょう」 「栗平さんね、こちらの方とぶつかって倒れたんですよ。少し頭を打ったけど、結構飲んでる状態で酩酊してた方が原因かな」  飲み過ぎには気を付けないとダメですよと医師が困った顔で笑う。  50代くらいのベテラン風な医師は、明日レントゲン撮ろうねと言い残してベッドから離れるが、なにか思い出したように振り返り、ここに運んでくれたのもそちらの方ですよと言い残して部屋を出て行く。 「栗平さん、ドクターからもお話ありましたけど、今日は念のため入院です。その様子なら食べられそうですから夕飯持ってきますね。少し待っててください」 「え?あ、はい」  看護師は事務的な対応で淡々と説明すると、すぐに部屋を出て行ってしまった。
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