文は揺蕩う

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『長瀬後輩へ』  私が言葉を表し、その度に先輩の笑顔は咲いた。  その度にこの言葉を思い出す。 『隣の芝生は、何時だって青く見えるものだ。誰にだって例外はなった。私は君が思っている上に特別ではないし、君が歩むべき道程がどのようなモノであろうと、それは君の意思だ』  湖の底に彼女は居なく、今も彷徨い続けているとしても。  あの日の約束は変わりないし、思い出を捨てる事もままならない。  それが何時しか、思い出として続くように。  似ている彼女に沿いながら、今でも私は祈っている。 『__文は、君を離れ。揺蕩いながら思いを沈める。過去に意味はないけれど』  罪悪感を含んだ後悔は、今でも私の中に。  湖へ捨てた懺悔は、今も私を巣食い続ける。  手紙を瓶に入れ、湖へと投げ入れた。  私は、湖に。  先輩の日々を捨てた。  
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