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高校時代
「おい!」
高宮が校舎の屋上から町を見渡していると、ある男子が走ってきて、ふり返った高宮の胸ぐらを掴んだ。
「お前、浮気したって本当か!?
夏子、泣いてたぞ!
本当だったら承知しねえ!」
男子 ─── 1年のとき同じクラスだった屋代は拳をふり上げた。
「よせよ。」
高宮は冷たい目で屋代の顔を見た。
「手を放せ。
お前のストレス発散の標的になる気はない。
………こないだの模試、順位がふるわなかったみたいだな。」
模試の結果は、上から30位までの名前が廊下に張り出される。今回、常連の1人である屋代の名前はなかった。
「夏子の話を信じたフリなんかしやがって。」
屋代はカッと顔を赤くした。
突き飛ばすようにして手を放した。
高宮は片手で襟元を整えながら、そんな屋代を鼻で笑った。
「順位程度でそんなにイラついているようじゃ、本番まで持たないな。ライバルが減って助かる。」
「なんだと!?」
屋代はまた激昂したようだが、手は出さなかった。先ほど見抜かれたのを恥ているらしい。
高宮は軽く握った手を口に当てて、クックッと笑った。
「人の言葉に左右されすぎだ、屋代。
あと2、3年で成人なんだぞ、俺たちは。」
「……まあな。」
屋代はそれしか言えなかった。
「用が済んだなら教室に戻れ。」
「お前は?」
「言う必要があるか?」
屋代はくやしそうな顔でコンクリートをひと蹴りして、歩き去った。
「………めんどくせ。」
高宮はつぶやいた。
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