9人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
同窓会
まるで二人の関係の象徴のようなあの日のことを、屋代は他の思い出同様、昨日のことのように覚えていた。
だから、同窓会で集まったとき、真っ先に高宮に声を掛けたのだ。
「よお! お前もう結婚してんの?」
わざとそんな質問をした。
興味があったし、なにより『言う必要があるか?』─── あの冷たい物の言い方は健在だろうか? と期待したからだ。
ところが、高宮はにこやかに言った。
「してるよ。お前は?」
屋代は戸惑った。
ああ………社交辞令ってやつか。
目の前の微笑みに、あの日より冷たいものを感じて、屋代はぎこちなく笑った。
「してるよ。子供もいる。」
「そうか、うちもだ。」
「お互い、順風満帆ってわけだ。」
屋代はお決まりのようなセリフを言った。
雰囲気は和やかなのに、胸がひどく寒かった。
「オレ、少し飲もうかな。」
屋代は高宮から離れて、お酒のブースに行った。
コップに吟醸酒を手酌で注ぎ、喉に流し込む。
熱い感覚が喉を通って、身体を温めた。
屋代はその場にいた女子と、適当に談笑した。
高宮とはもう、話したくなかった。
なんだかひどく、悲しかった。
最初のコメントを投稿しよう!