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「はい、これで終わりです」
「ならそろそろお昼休憩に行っておいで」
「ありがとうございます」
司書員としてここに勤め始めて、今年でもう六年目になる。元々この大学に学生として通っていた私は、運良く新卒で就職するタイミングでここの司書員の募集を見つけ、館長に拾ってもらうことが出来たのだ。
昔から本の虫で、将来的に司書はもちろん、出版や印刷関係の本に携わる仕事を希望していた私は、館長に拾ってもらえたことを今でもとても感謝している。
図書館の奥にある書庫の地下に軽く食事くらいなら出来そうなラウンジスペースが設置されている。
この書庫には学生の入室は禁じられているため、この場所に来ることが出来るのは図書館の職員か、もしくはこの大学の職員だ。しかしわざわざこんな書庫の奥にある地下まで休憩に来る人はいない。
私と、もうひとりの人物を除いては。
「また寝てるんですか?」
ラウンジスペースに設置されたベンチから長い脚がはみ出していた。見慣れた光景に何も思わずに近づけば、くたびれたスーツ姿の男がひとり、目元に自分の腕を乗せて、光を遮るようにして眠っていた。
「…あ?」
私の声に掠れた低い声が応えた。
目元からそろりと腕が外される。
寝そべる彼の傍に立っていた私は、いきなり腕を掴まれたかと思えば、強引に彼のほうへと引き寄せられた。そのため咄嗟にその引力に逆らうことが出来ず、傾いた体が停止したのは、私の顔が彼の顔の目の前に来てからだった。
「ちょ、っと」
「…何だいつもの司書か、うるせえよ」
そして何故か三白眼に睨まれた。
目の悪い男は、今日も眼鏡を忘れたらしい。
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