第16話 ツバサの箱庭

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「……幽霊屋敷(ホーンテッドハウス)だね」  この湿った風は家の吐息のようで、麦野は口元をハンカチで覆った。あんなに沢山の霊が住宅街の一角に押し込められているとは……何なの、この家。  鞄の中から着信音が鳴る。 「――もしもし、麦野です。えっ、専務?」 「どこに居るのかね」  風見がスマホを取り上げて「■■駅から歩いて少しの民家。何の用?」と答えた。  音もなく外車が横付けされる。助手席のウィンドウが下がり、専務がスマホを耳から離した。 「道が狭くて難儀した」 「ンなデカい車で入って来る場所じゃねーんだよ」 「事の詳細は、麦野が青ヶ幾参与に提出した報告書で把握している。社員に寄り添う姿勢は素晴らしい。君は人事にも適性がありそうだ。麦野はこの車に乗ってアジロへ一緒に帰りなさい。風見は引き続き謹慎を続けるように」 「謹慎じゃねェって」  専務は「冗談だ」と頬を緩めた。 「事情が変わった。貫木ツバサさんには、が差し伸べられる」 「へっ」 「……そーいうこと」 「そういうことだ」  二人して勝手に納得してしまい、麦野は蚊帳の外だ。 「事務局は手を引く」
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