拓海からの連絡

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「ちょ、ちょっと待てよ、友梨子。友梨子って杉原製薬に勤めてるんだろ?」 『杉原製薬』という言葉が聞こえてきて、思わずスマホをもう一度耳にあてる。 「俺たち同業者だったんだな。まさか友梨子が杉原製薬に勤めてるとは……」 「どっ、どうしてそれを……」 そもそも私は就職先なんて誰にも言ってなかったはずだ。もちろん、大学の就職課や当時の数少ない友人は知っているけれど、拓海には全く関係ない人ばかりだ。 それに聖美にしたってそうだ。 聖美に知られるのが嫌で私は就職先を隠してたし、当時の数少ない友人たちは聖美のことを快く思っていない人ばかりだから、当然連絡なんてしていないはずだ。拓海はどうやって知ったのだろう。 「聖美が言ってたよ。友梨子、聖美が結婚式の司会をした新婦と親友なんだってな」 えっ、聖美が菜穂に聞いたってこと? 菜穂は私と拓海が別れた原因が大学の友達だったことや、その友達が酷い噂を流して私を傷つけたことは知っているけれど、その女性が聖美だったとは知らない。 菜穂だって自分の結婚式の司会をしてくれた人が、まさか私を傷つけた女性だったとは絶対に考えないだろうし、“結婚” という幸せに関わるような仕事をしている聖美が、そんな酷い女性だとは絶対に思わないはずだ。 そっか……。 聖美が菜穂から聞き出したんだ……。 おそらく聖美が菜穂に、「参列者の中で見たことある女性を見かけたんだけど、多分私と同じ大学の人じゃないかな?」とでも言って聞き出したんだろう。 私だって最初、親身に相談にのってくれる聖美に騙されたのだ。菜穂だって簡単に信じるだろうし、聖美の性格ならやりかねない。
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