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「リリ? 可愛い名前なんだな。君に似合ってる」
偽りの名前を本当の名前だと信じたのか、再び口元を緩めて微笑んだ男性は長い指で私の頬にそっと触れた。
ビクンと身体が反応し、電流が流れたように背中が熱くなる。
「そんなに驚かなくても。反応も可愛いんだな」
「べっ、別に驚いてなんか……」
可愛いと言われ、ベッドの上での常套句だとはわかってはいるのに、心音はますます激しくなる一方だ。
悔しいけれど、目の前の男性はこんなにも余裕があるというのに──。
久しぶりのこんな状況に私の思考は全く追いついていかない。でもこの状況は彼ではなく私が望んだことなのだ。
「あ、あなたの名前は? あなたの名前も教えて……」
今にも震えてしまいそうな声を必死で隠しながら、ターコイズブルーの瞳に尋ねる。
「俺? 俺はショウ」
「ショウ……」
名前を呼んだ瞬間、ショウの艶めいた瞳が柔らかに揺れた。頬に添えられていたショウの手が顎に移動して、そのまま少し持ち上げられる。
「リリ……」
ショウはそう私の名前を呼ぶと、それが開始の合図のようにゆっくりと顔を近づけ、優しく唇を重ねた。
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