2回目の女子会

10/20
前へ
/299ページ
次へ
一瞬会話が途切れたところで、タイミングよくうな重が運ばれてきた。 『うわぁ、うな重だ!』 3人で声をあげて喜んでいる間に、それぞれの前に長方形のお重と、肝吸い、赤出汁、お漬物が置かれていく。 「こちらの急須にはお茶が入っております。どうぞごゆっくりお召し上がりください」 お店の人が立ち去っていったところで、ワクワクしながらお重の蓋を開ける。すると目の前に、ふっくらと焼きあがった肉厚の鰻が現れ、湯気と一緒に甘くて香ばしいタレの匂いがほわっと漂ってきた。 「もう匂いだけで美味しいのがわかるよね! 今日はうちの3人が野球を観に行ってくれて本当によかったわ。こういうたまの贅沢がいいのよね。やっぱり鰻最高!」 「ほんとこの匂い、一気に食欲がそそられますよね。今日は鰻を食べることになるなんて思わなかったなあ。これも友梨子さんのおかげですよ。友梨子さんとジュニアの話を聞かなかったら急遽女子会なんてしなかっただろうし、おそらく土用の丑の日まで食べなかったですからね」 鰻を目の前にして嬉しそうな顔をしている2人になんて返事をしていいかわからず、返事に困った私は、「温かいうちに食べましょうか」と言って箸を手に取った。テーブルに置いてある山椒を少しかけて、お重の中にそっと箸を入れる。やっぱり蒸されているせいか、箸で持つと崩れるくらい身がふわふわとしていて柔らかい。そのまま口に入れると、ほどよく脂ののった鰻がほわっと口の中で溶けていった。
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30635人が本棚に入れています
本棚に追加