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「やっぱり最初の食事のときって、私たちと女子会をしたときのようなあの姿で行ったのよね?」
「はい、そうです。ちゃんと本来の姿をしてきてほしいって言われて……」
「じゃあ杉原部長も森下さんの姿を見てとてもびっくりしたんじゃない? あんなに綺麗なんだもん」
「そうですよ! 友梨子さんの姿を見た瞬間、ジュニアめちゃくちゃ驚いたはずです。そしてさらにベタ惚れですよ。だから同期が言ってたあの溺愛になるわけですね」
そう言われて、部長と一緒に食事をしたときのことを思い出す。なぜか部長は特に驚いていた風でもなかった。
私もあのとき少し不思議に思って尋ねたら、「会社の姿とは全然違うからびっくりした、同一人物だとは思わなかった」って答えてくれたけれど、そういう割にはロビーで待っていたときもすぐに私を見つけてくれたし、私を見て表情を変えることもなかった。先ほどのスパイ疑惑のことといい、どこか少し違和感を持ってしまう。その違和感に首を傾げていたら、再び美鈴ちゃんから質問が飛んできた。
「友梨子さん、ジュニアとはどこか出かけたりはしてないんですか? いつも食事に行くだけですか?」
「まだそんなに時間が経ってないし……。でもこの間は軽井沢に連れてってもらったかな」
軽井沢と口にした途端、あの日の楽しい出来事が思い出されてきて、優しく微笑む部長の顔が浮かんできた。
なんだか嬉しくて、そのまま部長の顔を思い浮かべていたら、この間の応接室でのキスのことを思い出してしまい、私はすぐに思考を止めた。
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