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それに桐田さんと美鈴ちゃんがいってた言葉──。
“じゃあ杉原部長も森下さんの姿を見てとてもびっくりしたんじゃない?”
“そうですよ! ジュニアめちゃくちゃ驚いたはずです”
ホテルのロビーで会ったとき、部長は全く驚いていなかった。同じ女性の桐田さんや美鈴ちゃんでさえ、あんなに驚いていたのに──だ。
それにたくさんの人がいるロビーで、座っている私をすぐに見つけてくれた。会社の姿とは違って髪の毛だって長いし、メイクだってしている。おそらく男性だとわかりづらいはずだ。
どうして?
どうして部長は私のことがわかったの?
やっぱり私の姿を最初から知っていたってこと?
そうなると少し不安になってくる。
知っていたのにどうして黙っていたのだろうか?
そう疑問に思いながら考える。
これまで部長と一緒に過ごしてきた中で、部長が嘘をついているとか、私を騙しているなんて感じたことは一度もなかった。真っ直ぐに私に熱い視線を向けてくれた。
何かあるとすれば、どこか雰囲気がショウに似ていると感じたくらいだ。
もしかして、ショウと何か関係があるのかな?
親戚? いとこ?
兄弟……ってことはないよね。
だってショウはクォーターだったし。
でも、お母さんが違う兄弟とか?
……って、そんなドラマみたいなこと、実際にあるわけないか……。
雰囲気が似ているというだけで、こんな突拍子もない妄想をしてしまうなんて自分に笑ってしまう。
ふふふっと頬を緩めながら歩いていたところで、私はハッとしてその場に立ち止まった。
確かあのとき……。
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