30612人が本棚に入れています
本棚に追加
ショウの正体
翌朝、私は自分ではどうすることもできない気持ちを抱えたまま、会社に向かっていた。
まさか部長とショウが知り合いだったなんて……。
その事実が衝撃的過ぎて、昨日はあれからどうやって家に帰ったかも覚えていない。気づいたら部屋の中にいて、放心状態のまましばらく座り込んでいた。
ベッドの中に入ってからも、目を閉じても全く眠ることなんてできず、一晩中そのことばかりを考えていた。
せっかく女子会で桐田さんから魅力的な提案を聞いて、協力してくれるという2人の助けを借り、怖いけど勇気を出して自分の本当の姿に戻りたいと思い始めていた。そんな矢先に知ったこの事実。
よりによってこんな信じられないような偶然があるのだろうか。
部長とショウが知り合いだったという事実はとても衝撃的だったけれど、だからと言って私はショウとのことを未だに後悔はしていない。
あの日、ショウと出逢っていなければ、今の私はなかっただろうし、きっとまだあの辛い過去に囚われていたはずだ。おそらく苦しい気持ちのまま過ごしていただろう。
聖美と拓海のことを思い出しても平気になったのは、あの苦しかった思いや心の痛みから解放させてくれたショウのおかげだ。何も聞かずに私の我儘を優しく受け入れてくれたショウにはとても感謝している。
だからこそ、知らなかったとはいえ、2人が知り合いだったという事実が、部長にもショウにもとても悪いことをしたみたいで、私はいつの間にか罪悪感に苛まれていた。
会社に到着し、玄関から受付の前を通って「おはようございます」と挨拶した瞬間、中井さんから睨まれるような敵意のある眼差しが向けられた。
一瞬、どうしてそんな視線が向けられたのか理解できなかったけれど、美鈴ちゃんが言っていたことを思い出し、それが部長との噂からであることを理解した。
噂はどのくらい広まっているのだろうか。
そのうちこんな視線が多くの女子社員から向けられるようになると思うと怖くなってしまう。
総務部のフロアに入って桐田さんと美鈴ちゃんに昨日の女子会のお礼を言ったあと、私はいつもよりもかなり早く8階へ移動した。8階で部長と顔を合わせるのは躊躇われたけれど、2人の前でいつもと同じように振る舞う自信もなかった。
8階のフロアに入り、挨拶もそこそこにすぐにミーティングルームに入る。パソコンを開いて仕事を始めていると、ドアをノックする音が聞こえ、部長が部屋の中に入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!