ショウの正体

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「おはよう。今日はいつもより早いな。やっと友梨子の顔が見れた。昨日は会議が終わって急いで戻ってきたのに、もう友梨子は下におりてたんだよな……。昨日の女子会は楽しかったか?」 部屋の中に2人だけのせいか、とっても甘い顔で話しかけてくれる部長に、楽しかったです──と作り笑いを浮かべながら答える。いつもなら私に向けてくれるこの笑顔が嬉しくて仕方がないはずなのに、今日は部長の顔がまっすぐに見れない。 「友梨子、もっと顔を見せてくれよ。3日も見れなかったんだぞ」 少し拗ねているような甘える声に、ますます顔を合わせられなくて俯いてしまう。 「どうしたんだよ。何かあったのか?」 「だってここ会社だし。それに……、噂が……」 部長の顔を見ると好きだという気持ちが止められなくなりそうで、涙がこぼれてしまいそうだ。部長の気持ちに応えられないとわかった今、こんな風に2人きりでいて、さらに社内に変な噂が流れても困る。私はなるべく視線を合わせないようにして、泣かないようにぎゅっと口元に力を入れた。 「噂? 噂なら気にすることはないよ。俺がきちんと対処するし、それに友梨子のことはどんなことがあっても俺が守るから」 どうしてこんなにも優しい言葉をかけてくれるんだろう。必死に我慢して口元に力を入れているというのに、少しでも気を抜くと涙がこぼれてしまいそうだ。 おそらく──。 部長はまだ、私がショウと一夜を共にしたことを知らないのだ。 今すぐにでも全てを話して楽になりたいけれど、今は業務中だ。公私混同なんてできないし、話してしまうと自分がどうなるかわからなくて、仕事どころではなくなってしまう。 幸い、この経営戦略部で仕事をするのも今週限りだ。 部長に迷惑をかけないように金曜日まではきちんと仕事をして、そして土曜日に部長に付き合えないことを全部打ち明けよう──。 私はそう心に決めると、無理やり笑顔を作り、ゆっくりと部長に顔を向けた。
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