ショウの正体

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ところが──。 部長は何かトラブルでもあったのか午後から急に忙しくなったようで、結局その日は私が総務部に戻る時間になってもフロアに戻ってはこなかった。 翌日も、翌々日も、朝8階のフロアに上がったときに顔を見る程度で、ほとんどミーティングルームにも入ってくることはなかった。 こうして部長と一緒に仕事ができるのも残りわずかだというのに、まだ答えを告げていないにもかかわらず、既に部長との繋がりが切れてしまったようで、言いようのない寂しさを感じながら私は最後の翻訳業務を続けていた。 金曜日の夕方、やっと少しトラブルが落ち着いたのか、部長がミーティングルームに顔を出してきた。 「友梨子、今までサポートしてくれてありがとな。友梨子と一緒に仕事をする最後の週だったのに、なんかバタバタしてごめんな」 いつもと変わらない甘い笑顔がとてつもなく嬉しくて、この笑顔を見ているだけで気持ちが満たされ、温かくなる。 「いえ、そんなことないです。部長のサポートができてよかったです。私も久しぶりに英語の翻訳をして勉強になりました」 私も部長のサポートができて本当によかった。 最初このサポートの話を聞いたときには、ものすごく不安でできれば断りたかったけれど、終わってみると本当に幸せな時間だった。入社してから毎日変わらない日々を送っていた私には、プレゼントのような2ヶ月間だった。 「来週から友梨子とこうして会えなくなるのは寂しいな。でもこれからは会社じゃなくても会えるようになるもんな」 これから一緒に過ごせると信じている部長の優しい笑顔が辛くてたまらない。 「友梨子、明日10時頃に迎えに行くからよろしくな」 「わかりました。よろしくお願いします。それと今日までお世話になり、ありがとうございました」 私はそう言うと、パソコンを持って総務部のフロアへと戻っていった。 そして──。 部長に返事をする土曜日の朝がやってきた。
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