第三章 信念

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 昨日あれほど感動した自分が、何だか馬鹿みたいだ。黙り込んでいると、城が怪訝そうな顔をした。 「立花さん? どうかしました?」 「ああ、いえ」  はっとした優真は、あわてて話題を変えた。 「ところで城さんて、徹司さんのことを兄貴って呼ぶんですね」  他の舎弟は全員、氷室を社長と呼ぶのだ。兄貴呼びするのは、城だけである。すると城は、恥ずかしそうな顔をした。 「あー、本当は、ダメなんすけどねえ。俺、十七の時に兄貴に拾ってもらって以来世話になってきたから、癖が抜けないんすよ」 「そうだったんですね」 「ハイ。そっから十年、ずいぶん可愛がってもらいましたよ」  城は、懐かしそうな眼差しをした。 「そうそう、一番恩に着てるのは、あれっすね。俺を庇って、エンコを詰めてくれたこと」  氷室の欠けた指を思い出した優真は、はっとした。 「城さんのため、だったんですか?」 「うん、元々は俺の不始末だったんすけど。でも兄貴、下のもんの管理は自分の責任だって。あん時俺、一生兄貴に付いて行くって決めましたね」  城は、にっこり笑った。 「あ、すんません。俺の話を長々としちゃって。風呂の支度でも手伝います? 兄貴、まだしばらく仕事ですし」 「……いえ、大丈夫です」  迷ったが、優真は断った。あの女店主の深刻な表情が、気になっていたのだ。まさかとは思うが、月城組に脅されてでもいるのか。それを確かめたかった。
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