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すると、氷室が答えた。
「いやいや、会長自らお越しいただくとは、恐縮です。おかげで、東郷組の悪行については、よくわかりました」
意外にも和やかな雰囲気に、優真は戸惑った。取りあえずわかったのは、『ランコントル』の女店主は『わたあめ通り商店街』の会長で、氷室に何やら相談しに来たようだ、ということだ。それも、東郷組が絡んでいるらしい。
「あの連中のことは、他からもいろいろと耳にしてました。違法営業、客とのトラブル……。とはいえ全面的な抗争となると、かえって商店街の皆さんに迷惑をかけかねないですからね」
氷室が渋い顔をする。ええ、と女店主は頷いた。
「だから、これでも譲歩はしてました。おとなしく商店街から出て行けば、見逃してやる、とね。しかし、そこまでやらかしてたとなれば、もう甘い顔はできません。何より、カタギさんに迷惑をかけるのは、許せませんわ。徹底的に排除させてもらいます」
優真は、思わず氷室の顔に見入った。彼は、これまで見たことも無いほど厳しい表情を浮かべていた。
「お手を煩わせて、すみません。でも、月城組さんが付いていてくださると思うと、本当に安心です」
女店主が、深々と頭を下げる。いやいや、と氷室が答える。ひどく優しい声音だった。
「東郷組の連中に関しては、一掃しますからご安心を。それから、今後も何か問題が発生したら、ご遠慮なく言ってください。街を守るのが、我々の務めですから」
優真は、夢中で会話に聞き入っていた。予想とは、まるで違う。氷室は、月城組は、街や商店街を守る存在だった。そして人々も、彼らを頼りにしている……。
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