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<3・唐突に、悪役冷蔵。>
自分はどうなったのだったか。
何が起きたのか。
真っ暗な闇の中に沈んでいきながら、ただただつみきは頭の中に響く声だけを聴いていた。
『このたびは弊社のゲーム、“破滅のセシリア”をお買い上げいただき、誠にありがとうございました』
女性の声のような気がするが、よくわからない。なんせ何重にも反響しているからだ。強いているなら、機械で作った女性の声をベースに、元の声の主が割れないようエフェクト加工を施しているとでも言えばいいのか。
『おめでとうございます、西岡つみき様。貴女は弊社の、特別プロジェクトの抽選に選ばれました』
特別プロジェクト?と心の中で鸚鵡返しに問いかける。残念ながら、声は出ないし瞼も上げられない。酷く眠い。言われていることも、半分しか頭に入ってきていない気がする。
『これは非常に名誉なことです。何故なら、皆様が望む、ゲームの世界への異世界転移が可能となったのですから。これから西岡様を、私達が生み出した箱庭、破滅のセシリアの世界へとご招待致します。ご安心ください、ゲームを一度クリアすれば、西岡様はお連れ様といっしょに元の世界に帰ることができます』
お連れ様――多分、疾風のことだ。
彼は一体どうなったのか。自分と共に、あの得体の知れない穴に落ちてしまったように見えたが。
『ただし、ゲームの世界では現実と同じように命を落とします。お連れ様も同じ。この世界で亡くなったら、生きて元の世界に帰ることはできなくなってしまいますのでご注意ください』
ちょっと待ってくれ。何だ、その滅茶苦茶な理屈は。さすがにぎょっとして文句をつけようとしたところで、落ち続けていた体がゆっくりと止まり始めるのを感じていた。
出口が近いのを、本能的に感じ取る。
『注意事項は以上です。ハッピーエンドを目指して頑張ってください。それでは、御健闘をお祈りいたします』
残念ながら、こちらからの質問やクレームは一切受け付けないらしい。そうこうしているうちに、全身の感覚がふわふわとしたものに変わっていく。まるで肉体が毛糸の玉のようにほどけて、新たな品物に再構築されていくかのよう。
――何が、どうなって。
そして、再び。
つみきの意識は、遠ざかっていったのだった。
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