<3・唐突に、悪役冷蔵。>

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 気の強そうなその顔立ちには嫌というほど覚えがある。なんせ、自分が昨日の夜までプレイしていたゲーム、破滅のセシリアの主要キャラクターの一人であるのだから。そう。悪役令嬢の――ディアナ・アガター。主人公を多くのルートで苛め、場合によってはナイフで刺し殺したりもするライバルキャラクターの顔である。年齢は十七歳。主人公であるセシリアより、一つ年上ということになっている。 「う、嘘だよねぇ……?」  そっと右手を上げてみる。すると、鏡の中の美しい少女もまた、全く同じ動きをした。クールなディアナがけしてしないような変顔もしてみる。頬を膨らませてみたり、引っ張ってみたり、舌を出してみたり。  残念ながら、全部自分が思った通りに、鏡の中の少女も動くわけで。  それは即ち、本当の本当につみきがディアナになってしまったということなわけで。 「う、嘘だと言ってよ、ねえ……!?」  誰が聞いているかわからない、という自制の心はまだ残っていた。幸い部屋には誰もいないが(豪奢なベッドもあるし机もあるし、多分ここはディアナの部屋なのだろう)防音性がどれくらいあるかは怪しい。隣室や廊下で誰が聞いているのかもわからない。頭を抱え、つみきは控えめに叫んだ。残念ながらそんな配慮をしたところで、目の前の現実には一切影響を与えないわけであったが。  どうやら自分は、悪役令嬢になってしまったらしい。確かに昨今のラノベの主流ではある。普通のOLが死んだらうっかり悪役令嬢になってしまいました、なんてのはベタすぎるほどベタな展開だ。そろそろ流行しすぎて飽きられてきたんじゃないかと思うほどに。  そう、これが他の乙女ゲーで、かつ主人公であるヒロインに成り代わったというのなら自分もそれなりに歓迎したのかもしれない。が。  何故、よりにもよってこの“破滅のセシリア”なのか。  何故、よりにもよって悪役令嬢のディアナなのか。  確かに、異世界転移してみたいなんて思ったことは少なからずある。でも、まかり間違っても“転生”したいなんてことは思ったことがないし、何より。 ――あ、あのアナウンスが本当なら。私、この世界で死んだらマジで死んじゃうってことだよね?そうだよねえええ?!  あのゲーム会社の陰謀なのか、仕様なのか?
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