<3・唐突に、悪役冷蔵。>

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 確かに異世界に行ってみたい気持ちはある、が。こんな命がけの状況など、まったくもって望んでないのである。というか、そういうものに選んだというのであれば無理やり転移させずに、相手の了承を取ってからやれと全力で言いたい。確かに、滅多なことでは体験できない経験ができるのかもしれないが! ――このゲームで生き残るって、すごいハードじゃん!ディアナだってめっちゃ死にまくるのよこのゲーム!?死亡フラグどんだけあると思ってんの!?  やばい。冷や汗だらだらになったところで、ようやくもう一つの事実に思い至った。  もう一度周囲を見回す。やはり、部屋にはつみき=ディアナ一人しかいない。 ――神楽君は!?あの様子だと、完全に巻き込まれてるよね?ど、どこ!?  まずは今、自分がどういう状況に置かれているかを把握しなければいけない。部屋の中にはカレンダーの類も今のところ見つからないし(机の中に入ってたりするのかもしれないが)、ゲームの中においていつ頃の時間軸なのか、現在どのルートを進行中なのかもさっぱりわからないのだ。  そして、疾風のことも気になる。自分と一緒に巻き込まれてゲームの中に入ってしまった可能性は高い。そして自分が悪役令嬢のディアナになっているのであれば、彼も物語の登場人物の誰かしらに成り代わっている可能性は濃厚だろう。問題は、どの登場人物になっているか、だ。それによってフラグ管理も変わってくる。そもそも彼が、ディアナと簡単に合流できる人物なのかどうかが問題だ。それこそ、ディアナと犬猿の仲であるキャラクターや、そもそも一切かかわりのないキャラクターなどごまんといるのである。もしそちらになってしまった場合、合流して今後を相談することさえ困難になってしまうだろう。  いっそ、転生者(転移者?)同士で話せるテレパシーのようなものがあればいいものを!とにかくこの部屋を出て探索するしかないのか、混乱しながらつみきがそう思った時だった。 「!」  コンコン、と部屋のドアを叩くノックの音が。そして。 「……失礼します。ディアナさんは、いらっしゃいますか?」  女性の声が響いた。  誰なのか、と思った直後で相手が名乗る。 「あの、私……セシリア・カーシュと申しますが」  それはまごう事なき、このゲームの主人公の名前であった。
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