<4・突然に、主人公。>

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<4・突然に、主人公。>

――どどどどどどどうしよう、どどどどどどどどおしよおおおお!?  正直に言おう。つみきはパニックだった。  なんせ自分は、この世界に関する状況をほぼ把握してない。今がゲーム内でのいつの時間軸なのかもわかってないし、ルートもどのへんなのかさっぱりという状況である。まあ、あのゲーム制作会社?らしき声から察するに、既に生存不可避な詰みルートに入っているということはない、と信じたい、が。 ――いいの?こ、ここでセシリアと顔合わせて大丈夫なの?ていうかセシリアどんな顔してるんだろゲームでは表示されないしってそんなこと考えてる場合じゃなあああい!  問題は。とにかくつみきが、自分が“悪役令嬢のディアナになっちゃったっぽい”、“此処がそのディアナの部屋っぽい”ということしか理解していないということである。ディアナの部屋をセシリアを訪れるイベントはあるが、その数が多すぎて今が“どれ”に該当するのかさっぱりわからない状況だ。ていうか、自分も攻略サイトの要所を読んだばかりだし、全ルートの把握などできているはずもない。  結論。  何がフラグになるかもわからない状態で、セシリアに会うのは非常にまずい。  いや、だからといって会わないのもそれはそれで好感度に影響して非常にまずいことになるわけで―― 「ディアナさん、いないんですか?……あ、鍵開いてる。入りますよ?」 「ちょ」 ――待って待って待って返事しなかったのに入る普通?ていうか私鍵閉めてろよ馬鹿なのアホなの迂闊なの!?  心の中でツッコミながら、凍りついたようにドアを見る。  がちゃり、という音とともにドアがゆっくり開いていくまで三秒。 ――いやああああああgれw09んj5gt「49-09くvt1「k2fq9tvw「-w、5mv6t8さ0hwあfcvごtrてgwj04m02る08う3j08くぁwせdrftgyふじこlp;:!!  声にならぬ絶叫を上げた、次の瞬間。 「い……へ、え?」  椅子から滑り落ちたところで入ってきた人物の顔を見て、つみきは眼をまんまるになったのである。  その女性の顔に、明らかに見覚えがあったからだ。なんせここ最近は穴があるほど目で追い続けてきたのだから間違いない。元より、人の顔を覚えるのは得意な方だから尚更に。 「か、神楽、先輩?」 「……ああ、良かった。やっぱり、君だった」  セシリアとしての赤いドレスを身に纏った、黒髪黒目のその女性は。  明らかに、神楽疾風と同じ顔をしていたからだ。
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