<4・突然に、主人公。>

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 それはまあ、仕方ない。というか、不可抗力のレベルだろう。そもそも、自分がいかにも女の子ですな見た目になっているなら、体がどうなっているのか確かめたくなるのも普通のことではあると思う。それに、言ってはなんだが彼も二十代の健全な男性であったわけだし、ちょっとえっちな気持ちで観察してもどうしようもないと言えばそうなのだが。  というか、よくドレスに着替えられたな、と思う。男性である彼がそういう服の着方を嗜んでいるとは思えないのだが。 「よくドレス自力で着れましたね。メイドさんにでも手伝って貰ったんですか?」  つみきが尋ねると、“それがさあ”と彼はがっくり肩を落として言った。 「困ったから廊下を通ったメイドさんに手伝って貰おうと思ったんだけど、誰も助けてくれないんだよ。一人でなんとかしろと言わんばかり!酷いと思わない?仕方ないから一人で頑張って着た。人間頑張れば割とどうにでもなると学習したところ!」 「す、すごいね……」 「ちなみに、なんとなーく西岡さんがこっちにいる気がしたから、勘でずんずん廊下歩いてきたら辿りついたのがこの部屋だった!部屋に、ディアナって名前書いてあるから、きっとディアナって人が西岡さんなんだろうなって!」 「勘……」  どうしよう、この人も結構ツッコミどころだらけだった。つみきは苦笑するしかない。いや、元々天然ボケのドジっ子気質ではあったのだけれど。 「ま、まあ……とりあえず」  このまま彼のペースに合わせていたら、日が暮れてしまいそうである。つみきは強引に話を切り替えることにした。 「えっと、ということは。此処は私……ディアナの家で。主人公であるセシリアは、私の家に泊まりに来ていたってわけ、ですよね」  あまり混乱している時間もない。幸いにして、セシリア=疾風の状況が分かったことでだいぶシチュエーションが絞れた。確かにディアナとセシリアがこうして二人きりで会うことになるシーンは多いが、それがまだ日が高い時間であり(窓の外を見る限り正午前後だと予測している)、しかもディアナの家にセシリアが宿泊しているという事実。  このシチュエーションに該当するのは、自分が知る限り一度しかない。
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