<5・相談しましょ、そうしましょ。>

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 わかってはいるが、はっきりそう言われると背筋が冷たくなる。 「そうやって、人が極限状態でどういう風に生きるのか、手を尽くすのか観察したい連中がいる。そいつらがゲームを作った、あるいはゲーム製作者を騙って俺達を拉致した……そう考えた方がよっぽど自然だ」 「確かに……。本当にこのゲームで死んだらリアルでも死ぬのかなんてわからないけど、あんなアナウンスされたら“何が何でも生き延びなくちゃ”って血眼になって当然ですもんね」 「だろ?」  もし、あのアナウンスがなければ。無理やり拉致されてきた勢の中には、夢だと思い込んで早々にこの場所で“死ぬ”ことを選ぶ者もいたはずだ。それこそ、死ねば元の世界に帰ることができるかもしれないと考えるのもおかしなことではない。  なるほど、実際に死ぬかどうかわからなくても、わからないことに意味がある。あのアナウンスで、元の世界に帰りたいと思う人間は何が何でも死ねなくなったし、この世界に永住したいと思う人間もそれはそれで死亡フラグを回避しようと頑張るはずだ。まあ、このゲームは一応乙女ゲームでもあるので、それ以外のフラグも容易に立ちまくってしまうわけだが――。 ――必死で生きようとするいろんな人間を観察したいなら……それこそ事前に希望者を募ったりしなかったのもわかる、かも。いろんなパターンの人を観察したいんだろうし。  正直、傍迷惑でしかないが。  一体どれだけの人間がこの異世界転移(という名の、既存人物への成り代わり)に巻き込まれたのやら。自分達と同じように、この世界には他にも成り代わってしまった現代人がいるかもしれない。  もしそういう人物を発見することができれば、共に生き残るために手を取り合うこともできるのかもしれないが。 ――結局答えが、死亡フラグを二人で回避しまくってエンディングまでこぎつける、しかないの泣ける……!  なるほど、これは。犯人が本当にゲーム制作会社か、それ以外のテロ組織や神様や異世界人やら宇宙人やら――であるかどうかは関係ない話だろう。ていうか、それを突き止めようと動く余裕もなければ、証拠がゲームの中にあるとも思えないのだから。 「で、ちょっと話横道に逸れたけど」  ぐい、と顔を近づけてくる疾風。相変わらず顔が綺麗すぎる。この姿になっても疾風は疾風なので、正直間近で顔を覗き込まれるのは心臓に悪いのだが。 「今、俺と君はプロローグにいるんだったな?俺が主人公のセシリアってことは、俺の選択次第で君との今後の関係も変わるし、ある程度ルートが誘導されるってわけだ。……俺達二人で生き残ると考えた場合、どのルートに進むのが一番いいと思う?俺はこのゲーム、CMでタイトル見たことあるなーくらいにしか知らない。そんな恋愛フラグよりはるかに死亡フラグが立つゲームだなんてまーったく知らなかったし」
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