<7・ヤンデレ怖い、超怖い。>

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 心の中でオタクまっしぐらの叫びを上げつつ、表面上は平常心を取り繕って答える。 「ど、どうしたのアシュトン。今日も可愛いわね」  おっといけない、つい本音が。 「むう、可愛いというより、お姉様にはカッコいいと言って貰えた方が嬉しいんですけど!」  そんなアシュトンは、ぷう、とむくれたように頬を膨らませる。  可愛い。めっちゃくちゃ可愛い。最強最高に可愛い。そんなスチルはゲームにはなかったぞ、と思わず鼻血を噴きそうになる。 「ご、ごめんなさい。きっと将来はイケメ……素敵な紳士になるだろうって意味だったの」 「それならいいんですけど!……そうそう、お姉様まだ始業まで時間ありますよね?郵便局に寄ってもらえますか?昨日手紙を出し忘れちゃって」 「!」  が。そんな頭お花畑も、この台詞で一気に醒めることになる。思い出したからだ、本来のゲームではここで選択肢が出たのだということを。ディアナは悪役令嬢であるが、部分的にはディアナ視点で物語が展開するシーンがある。ここもまさにそんな場面だったのだ。  実はこの超可愛いショタっ子も、選択を誤ればディアナとセシリアにとって致命傷になりうるのである。悪役令嬢攻略ルートを疾風=つみきに取らせるなら尚更気を付けなければいけない。この子の好感度を“ほどほどに”上げておかないと、最終的にはヤンデレ化して包丁持って襲ってくることになるからだ。 『うわああああああああああ!ひどい、ひどいひどいひどいひどい!僕を差し置いて、なんで、なんで、なんで、なんで!お姉様は、僕のお姉様なのに!他の人になんてあげないのに!うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』  これがまた、声優さんによるフルボイスの絶叫つきだというのが恐ろしい。  この台詞と同時に、包丁でディアナは滅多刺しにされるのである。直前までアシュトンにおかしな様子が表面化しないものだから、初見では彼がいきなり豹変したようにしか見えないのだ。  そして、このボイスと共に、生々しい音が真っ暗闇に響き渡るのである。
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