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ざくざく、ざくざく、ざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざく――。
そして最後には、悦に浸るようなアシュトンの台詞がねっとりと聞こえて来るのだ。
『うふふ……お姉様、これで僕達、ずーっと一緒ですよお……!』
そして画面に浮かび上がるのは。両目を抉られ、頬の肉を削がれ、腹を裂かれて腸がでろんと溢れ出しているディアナの姿、という。
はっきり言おう。一度でも見てしまったらトラウマものである。そしてこの乙女ゲー、いくらR指定とはいえやりすぎではなかろうか。
――実は初見であのルート踏んじゃったんだよね。……正直、夢にまで出てきたレベル。
まあ、翌日にはそれをころっと忘れて、別ルートを模索するべく再度プレイした自分に言えることではないが。
とにかく、そんなわけだからセシリアとの仲良しルートを選ぶ以上、アシュトンを蔑ろにしてはいけないのだ。本来のディアナはアシュトンを可愛がりつつも、どこか見下しているというキャラクターである。だからここで、手紙を持っていってほしいという彼のお願いを断るのも不自然ではない。ではない、のだが。ここで断ってしまうと、それだけでアシュトンの好感度が一気に下がり、どこかで挽回しないと例の“弟君ヤンデレバッドエンド”不可避となってしまうのである。
ゆえに、選ぶ選択肢はほぼ一択だ。
「わかったわ。これを持っていけばいいのね」
「ありがとう、お姉様!」
手紙を受け取らない、というのはない。
後で挽回できるシーンはあるが、正直そのシーンを出す工程がちょっと面倒くさい。
「お姉様、僕のお願いあんまり聞いてくれないから、断られるかと思ってた。嬉しいです!」
「あ、はは……」
ニコニコしている少年に、つみきは引き攣った顔で笑った。ごめんなさい、私が生き残るためなんです――とは、言えない。
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