<7・ヤンデレ怖い、超怖い。>

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「シュート!」 「おおおおおおおおおおおおおおおお!」  そして馬車で学校へ辿りつき、真っ先に見かけた光景につみきは口をあんぐり開けることになるのだった。 「か、神楽せんぱーい……!?」  虫も殺せないような可憐で華奢な美少女、が。  何故かジャージを着て、始業前にグラウンドでサッカーボールを蹴っている。確かに、彼は学生時代サッカーをやっていたし、しかも全国クラスの腕前だったということも記憶してはいるが。  それでも高校生くらいの女子はまず、男子と混ざってサッカーはしないわけで。というか自分の記憶違いでなければ、朝練やっている我が高等学校はかなりサッカー部が強かったと記憶しているのだが。 「すげええ!セシリア、お前サッカー強かったのか!」 「女子でも全然当たり負けしないしどうなってんの!?」 「今、ジャンを抜き去ったところ!どうやったのかさっぱり分かんなかった。回転した?くるっと回転したよな?再現してくれ!」 「おう、いいぞ!こう、こう、こうだ!」 「すごすぎてわからんんん!」  見事なドリブル&シュートを決めた疾風のところに、次々集まっていくサッカー部の少年達。たった一日で、すっかりヒーローではないか。  同時になんとなく察した。彼がもはや、セシリア、のキャラを演じることをほぼ放棄しているっぽいということに。というか縁起が極端に下手なタイプなのではないか。 ――ほ、本来のセシリアって草食系の文学少女だったはずなのに、いいのかなこれ!?  本当は、今後についてもう少し話したくてちょっと早く学校に来たのだが――この様子だとそれは難しそうである。  何処に行っても人の役に立てる、誰かを喜ばせることができるというのは疾風の才能であり長所であるのは間違いないだろう。だがしかし、こうも彼の行動がまったく読めない、というか一番コントロールできなさそうというのがまた。 ――な、なんだか不安になってきた。  果たして彼のフリーダムすぎる行動が、吉と出るやら凶と出るやら。
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